HERE COMES THE SUN

太平洋の南の島マーシャル諸島からの日記です

カヌーハウスへ社会科見学

カヌーハウス

ハルカのクラスでは、社会の授業でマーシャル諸島について勉強している。先週はマーシャルの航海術がテーマ。担任の先生はアメリカ人で夏にマーシャルに来たばかりなので、マーシャル文化について詳しく知らない。そこで先生の要請に従って、主にPTAクラス役員の保護者が中心となり、マーシャル文化について教えたり社会科見学をアレンジして、クラスを手伝っている。今回は航海術がテーマなので、WAMカヌーハウスへ社会科見学に行った。子どもたちは学校からカヌーハウスまで車で移動する。車を出して同行できる保護者を募集していたので、私も一緒に行くことにした。

今回子どもたちに話をしてくれるのは、WAMカヌーハウス代表のオルソンさん。ここではマーシャルの伝統カヌーの作り方や航海術などを教える職業訓練を行っている。カヌー文化を若い世代に伝えるという役割だけでなく、学校を中退した若者たちが手に職を得て、社会で働いていけるように訓練をする目的もあるという。実際、学校中退した若者の中には、小学校中退や中学中退も珍しくないので、職業訓練の内容はカヌーのことだけでなく、基礎的な英語や数学も学ばせるそうだ。素晴らしい取り組みだと思う。太平洋諸島ではカヌー文化がそれぞれあるが、カヌーやカヌーハウスは男だけの場所、という国もある。その点、マーシャルではカヌーハウスも男女問わず出入りできるし、技術も学べるそうだ。

ディズニー映画「モアナ」に出てくる人物マウイのマーシャル版だと評判のオルソンさん。子どもたちのためにマーシャルの伝統的な衣装を着て、マーシャル語でお話をしてくれた。オルソンさんのもうひとつの顔は役者。マーシャルの映画にマーシャルの神様役で出演もしている。普段は気さくな笑顔で冗談好きな感じなのに、今回は真顔で迫力ある語りに、子どもたちはすっかり引き込まれていた。それも友人がカヌーハウスを訪れた途端に素のオルソンさんに戻ってしまい、そこから英語になったり冗談も出て、みんなを楽しませてくれた。「モアナに出てくる山は、コスラエ島のスリーピングレディがモデルだから、女の子を乗せてここからコスラエまでアウトリガーカヌーで行けば、映画とまさに同じだよ」とオルソンさん。リアルなモアナの世界がこんなに身近にあるとは!

マーシャルのカヌーには、近所で釣り用、ラグーン用、外海航海用と3種類の大きさがある。地図もGPSもない時代に、潮の流れと月や星の位置で方角を定め、700km離れた島まで航海できる大きいタイプでは、50人程乗れる大きさで移動していたそうだ。知らなかったマーシャル語も習った。航海中、男たちは一生懸命カヌーを漕ぎ、その横で女たちはチムチムするらしい。チムチムとはマーシャル語で応援、チアーリーディングのこと。女たちが踊りながらチムチムすることで男たちは頑張れるらしい。ただ、これは一般的にはほとんど知られていない単語で、消えゆく昔の航海用語、といったところのようだ。同行した私もいろいろ学べて満足な社会科見学だった。

↓カヌーハウスの目の前は海。