HERE COMES THE SUN

太平洋の南の島マーシャル諸島からの日記です

外国人に日本語を教える

海外に長く住んでいると、たまに「日本語、教えて」と依頼されることがある。日本人で日本語ペラペラだから日本語の先生ができるだろうと思われてしまうのだが、日本語が話せることと、外国人に日本語を教えられることは全く別だと思う。日本語は母語として自然に習得しているからなおさら、日本語を初めて習う人に何から始めたらいいのか、文法のルールをどう説明したらよいか、難しいところ。例えば、初心者に動詞を教えるとき、辞書形の「来る」だけ教えてもすぐ使えないから、「きます」「きません」「きました」等、「~ます」の丁寧語の形から教え始めたほうが簡単とか、普通は知らないはず。


私は1-2年に1回ぐらいの頻度で「日本語教えて」と言われる。マーシャルで日本語教師が必要とされているのに、島に日本語教師がいないから。フルタイムで働く学校の日本語教師は、日本語教師の資格も経験もない私にはとてもできそうにないからお断りしているけど、週1回放課後のクラブ活動の日本語先生ぐらいなら引き受けてやったことがある。その程度でも、日本語を教える方法を知っておく必要性を感じて、通信教育のアルク「NAFL日本語教師養成プログラム」を受講した。受講料を払った意地で課題を提出して修了証をもらい、その知識はいまも役立っているので、受講しておいて損はなかった。

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小学校の放課後の日本語クラブ


あと、もっと日本語を勉強したいという知り合いの高校生に、家庭教師ボランティアでここ3年間コツコツと教えてきた。この子は学校の成績も良い優等生だったので、日本語学習は順調に進み、高3のときに日本の大学に行きたいと言って日本の大学を受験した。全部で7校ほど有名国立大と私大を受験。日本人でも合格したら「すごい!」と言われるような大学ばかり受験したので正直なところ合格できるか心配だったが、受けた大学の半分以上合格。合格しただけでなく、奨学金のオファーまでもらえた。日本人以外でマーシャルで育った生徒が国費留学生ではなく一般受験して、自分の実力で日本の大学に合格するのは初めてだと思う。この成功の秘訣は??


その一つに受験をしたのは、英語で授業を受けて英語で学位が取れるコースを設置している大学のみ。最近は日本の大学で、英語コースを設置する大学が徐々に増えている。これまで留学生は大学の授業を日本語で理解できるレベルの日本語力を身につける必要があり、求められる日本語のハードルが高かったが、このコースなら英語力さえあれば、日本語能力は入試で問われない。


次に、アメリカの大学受験と同様に、GPA(高校4年間の内申点)、SAT(アメリカの学力共通試験)、TOEFL(英語試験)で、できるだけ高いスコアを取っておくこと。遅くても11年生から準備を始める。高校で勉強以外の課外活動(各種コンテストの入賞、日本語スピーチコンテスト優勝とか、参加したボランティア、生徒会活動、バスケチームで優勝した等)も重要。あとは大学ごとに志望理由書や小論文を提出するので、自分らしい言葉で個性やユニークな視点を出して、ありきたりの受験生とは違う内容の文章を書けるかどうかも大事だと思う。そのあたりはマーシャルからの受験生という時点で既に珍しいし、ユニークな経験もあるので、他の受験生より有利な気がする。

あと良かったのが、今はコロナ禍ということもあり海外から日本の大学を受験するのに、書類の郵送とオンライン面接だけで合否が決まったこと。マーシャルから一歩も出ることなく受験できるなんて、数年前なら考えられなかったと思う。


そんなわけで、この子は10月から日本の国立大学へ進学が決まっているのだが、いまはコロナで留学生ビザの発給が止まっているので、日本へ行けるまではマーシャルからオンラインで大学の授業に参加することになりそう。マーシャルの高校生で、4年制の大学へ進学できる生徒はとても少ない。この子が、高校までマーシャル育ちでも頑張って対策を立てれば日本の大学へ進学も可能、ということを証明してくれたので、その姿をみて選択肢の一つとして日本の大学に挑戦する子が出てきてくれたらいいなと思う。そんな子がいたら、ぜひサポートしてあげたい。


最後に、私が日本語を教えるのに活用している、国際交流基金の日本語教材サイトをご紹介。海外で急に日本語を教えることになっても、ここからテキストも無料でダウンロードできるし、初心者に何から教えたらいいかもこの順に沿って進めば間違いないし、内容も楽しくて素晴らしく、本当に便利でいいサイトです。


◆いろどり 生活の日本語
日本の大学へ行って困らないように、実用日本語を学ぶために使っている教材。
TOP | いろどり 生活の日本語


◆エリンが挑戦!日本語できます。
初中級から。容赦ない自然なリスニングの勉強に。
www.erin.jpf.go.jp


◆教科書を作ろう
初級から使える便利な教材がたくさん。
www.jpf.go.jp


◆「初級日本語 げんき」 ジャパン・タイムズ社
最初は学校で使っていた教科書「げんき」ⅠとⅡを使って勉強した。英語で文法解説が書いてあるので、私の説明がつたなくても、生徒に自分で読んで理解してもらうことができ便利だった。
genki3.japantimes.co.jp