HERE COMES THE SUN

太平洋の南の島マーシャル諸島からの日記です

ミュージカル公演

3月2日からハルも出演するミュージカル「回転木馬」の公演が始まった。月曜から土曜まで毎日で、6公演。主役はダブルキャストで、月・水・金と火・木・土で違う子が演じる。昨年のミュージカルで主役だった子たちが、今年も主役を演じた。昨年の夏休みに主役の男子二人は、アメリカで行われたシェイクスピアの演劇セミナーに2週間、奨学金で参加してきた。こんな経験をしたあとで、二人はどう成長したのか気になるし、他にも昨年から出ている子たちも多くいて、我が子だけでなく娘の仲間たちみんなの成長を見るのも、楽しみだった。


さっそく初日に観に行った。ミュージカルは、原作の英語の脚本がすべてマーシャル語に翻訳され、マーシャル語で上演される。それも、マーシャル語文化の継承という点で素晴らしいことだと思う。マーシャル語が話せない子のセリフだけは英語になるけれど、今年は主役と準主役に英語でセリフをいう子がいなかったので、ほぼすべてマーシャル語。昨年の「ミュージックマン」に比べて、「回転木馬」はストーリーが複雑だったので、事前にあらすじを予習しておいてよかった。ハルも今年はダンスの場面で中心的に踊ることも多くて、観ていてとても楽しかった。

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ミュージカル「回転木馬

このミュージカルは、マーシャルの学生たちが本気で取り組み、指導する側もプロフェッショナルに本格的にやれば、ここまでのものが作り上げられるんだという感動と希望を、大人たちに与えてくれる。マーシャルの子供たちの平均学力がミクロネシアの中でも特に低いのは、子供の能力ではなく、学校と家庭での教育のやり方に原因があるのであって、学習環境を適切に整えてあげれば、マーシャルにいても世界標準レベルの学力が身につけられるのではないか?と思うのだ。それは簡単なことではないけれど、その希望を見せてもらったからには、大人たちはマーシャルの子供たちの成長する力を信じて、学校教育の向上に頑張らないといけない。


月曜の初日の舞台は、立ち見が出るほど盛況で大成功に終わった。私たちは最終日の土曜も観に行くことを楽しみにしていたのだが、木曜日に突然、公演中止が決定された。理由は、マーシャルにコロナウイルス感染の疑いがある人が一人出たため。木・金・土の公演は中止、指導してくれたプロフェッサーやボランティアの人たちも翌日のフライトですぐにアメリカに帰ってしまった。1月から一緒にずっと練習してきたミュージカルのメンバーとクルーは突然解散になり、関係者はみんなショックだった。後日、感染の疑いがある人は陰性であることがわかり、ホッとしたものの、アメリカに送った検査の結果がわかったのは、公演中止が決まってから数日後のことだった。


公演中止にハルもずいぶん落ち込んでいたけれど、ミュージカルに参加している生徒はみんなポジティブでいい子たちなので、こんな出来事のあとでも「みんな忘れないで、月・火・水に公演できたんだし、大成功だったじゃないか!」「アメリカから来て指導してくれたプロフェッサーやボランティアの方に本当に感謝しています」「この2か月は最高だった。みんなありがとう!また来年やろう!」とお互いにSNSで前向きに励ましあっていた。ハルにとっては、こういうつらいことをみんなで乗り越えられたのも、また貴重な経験だったように思う。

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ミュージカルのパンフレット