HERE COMES THE SUN

太平洋の南の島マーシャル諸島からの日記です

民間医療マーシャリーズ・メディスン

マーシャルでたまに聞くのが「ブラックマジック」という言葉。日本語でいうと黒魔術。誰かにブラックマジックをかけられると、その人には急な体調不良や、不運が起こるらしい。怖い!深夜に民家から離れた空き地などで焚火を囲んでいるグループがいたら、それはブラックマジックの儀式をしている可能性大。呪われるのは怖いけれど、この逃げ場のない小さな島社会で、身に余るほどの強い怒りや恨みを抱いてしまった人にとっては、ブラックマジックをかけることで少し気が晴れて本人の精神の安定につながるのであれば、これは精神的な民間医療なんだなと思う。
ブラックマジックは誰でもできるわけではなく、呪術師とされている人物がいないとできない。呪術師は呪いをかけるだけでなく、民間医療も行っている。「マーシャリーズ・メディスン」と呼ばれる薬草を使った手作りの民間薬を作ることができ、これが不思議と効くらしい。飲み薬もあるけれど、塗り薬の効き目は評判があるようで、ココナッツオイルをベースに薬草を調合して作る。これでおできが治った、皮膚病が治った、という話もよく聞く。
さて、コウが幼稚園から謎の皮膚病をもらってきてしまった。病院に行ったけれど、こちらにはきちんとした皮膚科がないので検査もできず、正確な病名は不明。病院の先生によると感染する皮膚病のようで、痒い小さな湿疹が腕と足にできた。早めに病院に行ったのに適切な処置を受けられず、症状は悪化する一方で、痒いプツプツが全身に広がってしまった。マーシャルではよくある皮膚病のようで、人に相談すると「ああ、それならウチの子もかかったことある。病院の薬はなかなか治らないけれど、マーシャリーズ・メディスンならすぐ効くわよ」と3人から聞いた。
ちょっと試してみたいなあと思っていたところ、コウのクラスの補助のマーシャル人先生の親類が薬を作れるそうで、コウの薬を作ってくれることになった。早く塗りたかったけれど、頼んでからすぐにはできない。それはわかっていたが、週明けにはできるかなと期待していた月曜日、「週末は酒を飲んでしまって薬を作れなかったの。今週作らせるわ。」と先生。薬を頼んでから10日程経過し、その間に病院で担当医を変えてもらって処置も変わり、おかげでコウの皮膚の症状も快方に向かっていた。
そしてついにマーシャリーズ・メディスンも作ってきてもらい、手に入れることができた。この薬はただの民間薬ではなく、コウのために特別に作ったものだから、ルールを必ず守らないといけないとのこと。そのルールとは、コウの両親以外の人は誰もこのボトルに触れてはいけない。子供たちもダメだし、他人もダメ。母親か父親が手にオイルを取り、コウに塗ること。もしコウ以外の誰かがオイルを必要としたら、母親か父親の手で塗ってあげるのはOKだけど、ボトルを手渡して使わせるのはダメ。オイルがなくなったボトルを捨てるのもダメ。もしルールを破ると、薬の効き目がなくなるから必ず守るように注意された。どうやら、おなじない込みの薬のようだ。いろいろな薬草らしきものが入ったボトルのキャップを外して中を見てみると、人の毛が一本入っていた。これは....ただゴミが混入しただけなのか、これもおまじないの一種なのか...。とりあえず、足にだけ塗って様子をみたら、皮膚病に効いているかはどうかは不明だけれど、アトピーの部分にはよく効いているようだ。塗ると痒みが治まるし、肌がベタベタしないので、コウは気に入っている。なかなかスッキリと完治しないので、早く治ってほしい。

↓マーシャリーズメディス