HERE COMES THE SUN

太平洋の南の島マーシャル諸島からの日記です

マーシャル学力テストと高校進学

マーシャルでは生徒の学力を測るため、公立と私立すべての3年生、6年生、8年生を対象に学力考査テストが学年の終わりに毎年実施されている。アメリカのSATテストのマーシャル版、ということでMISATと呼ばれている。3年生、6年生はまあいいとして、シビアなのが8年生のテスト。9年生から高校が始まるマーシャル。8年生はこのテストで60%以上の点数を取らないと、9年生に進学する前に1年間をプレ9年生という、高校入学準備学年で過ごすことになる。普通は4年間で卒業となる高校が、実質5年間になるということ。ちなみに、テストが20%以下の成績だったら、ライフスキルアカデミーという別の学校に行くことになる。

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マーシャル諸島高校プレ9年生の校舎


そもそも、プレ9年生という学年が設置された理由は、あまりにも高校の授業についていけない生徒、中学レベルの学習が身に付いていない生徒が多かったので、その生徒たちが高校で落ちこぼれないように、高校では高校レベルの授業をするために作られたクラスだった。昨年、マーシャル諸島高校のプレ9年生のクラスに一度お邪魔させてもらった。古い校舎の教室に生徒がぎっしり入っていて、頼りない扇風機が1台動くだけの蒸し暑い教室で、先生も生徒も汗だくで授業をしていた。私の予想より生徒が多くて驚き、プレ9年生の教室は足りていないのでは?とその時に思った。


マーシャルのラジオ局V7ABが、今年のマーシャルの全8年生のテスト結果による進学状況を発表していた。

マーシャル諸島高校:9年生合格79名(内、私立生徒40名)、プレ9年生合格372名 
ローラ高校:9年生合格12名、プレ9年生合格220名
クワジェリン高校:9年生合格3名、プレ9年生合格226
ジャルート高校:9年生合格36名、プレ9年生合格161名

ライフスキルアカデミー合格:48名

9年生とプレ9年生の合格人数、ふつう逆だよ!と衝撃だった。8年生のうち75%以上がプレ9年生進学って!公立で、高校はマーシャルでは義務教育なのに、9年生への進学基準がけっこう厳しいことにも驚いた。この進学結果は、テストでプレ9年生の判定が出たあと夏休み中にサマースクールに通うことで挽回して、9年生合格になった生徒も含む数だそうだ。私立の生徒も全員同じテストを受けて、マーシャル諸島高校の9年生とプレ9年生に振り分けられるが、大半の生徒はそのまま私立校9年生に進学できるので、公立に進まなければテスト結果は進級と関係がない。


公立の生徒が中学や高校で留年した場合、同じ学年をもう一度受けることはできるけれど、またダメだった場合3回目の履修はできない決まりで、退学して別の学校へ行かないといけない。私立の生徒なら退学になっても別の私立校や公立に行けばいいけれど、公立を退学になった生徒は他に通える学校はなくなってしまう。そこで、マーシャルではこの子が通える学校がもうないのよ、とアメリカ在住の親戚に相談して、アメリカの学校なら義務教育の年齢なら誰でも受け入れてくれるよということで、アメリカへ移住していく子もいる。マーシャルの公立校で学力がついていけなかった子が、アメリカの公立校でついていけるのかは疑問だけれども、親としては将来のためにも高校卒業資格は取ってほしいのだと思う。ちなみにマーシャルでプレ9年生に進級しても一定の成績を取らないと、プレ9年生の留年もある。


もう一つ、いま国会で上がっていた話が、今年のマーシャル政府奨学金による大学進学枠の少なさ。新しく選ばれたのは、たったの5名。マーシャルの高校やマーシャル諸島短大を卒業した生徒は大勢いる。優秀な子が海外の大学へ進学したくても、奨学金がないと進学できないケースがほとんどなのに、今年は5名だけというのは少なすぎる。少ない理由は、政府の予算がないからとのこと。マーシャルで大卒は貴重なエリート人材で、政府機関で働くことが多い。


教育省では今回のテスト結果を受けて、プレ9年生の生徒を対象に10月に再テストをして、その成績で挽回できれば9年生に上がれるという措置を取るらしい。マーシャルの教育システムは、まだ課題がたくさん見えている。